ビデオ講義でできること

緊急事態宣言が解除され,大学もようやく研究活動再開にむけて動き出しました。本研究室は情報系だけあってリモートで進められることも多く,学生のリテラシも高いので結構スムースにできている気がします。Slack, Dropbox paper, zoomがあれば対面よりむしろスマートにできていることも多いです。最近はspatial.chatも加えて,もうバーチャルラボでもいいんじゃないかと思えてきました。とはいえ,これができるのもコロナ前のコミュニケーションの貯金があるからであって,最初からこの形で進むと心配です。

 

研究活動はともかく,今学期の講義はすべて遠隔になっています。私はいろいろ検討した上で(一応技術的な検証を踏まえて)独自のサイトからのビデオ配信にしています。サイトの設計はどうということはないのですが,ビデオコンテンツを作るのは中々手間です。普段の講義をただ単にビデオにするだけだと,自分で観てみてもなんの面白みもありません。

 

こんなとき,参考になるのはyoutuberの皆さんです。それなりのフォロワーがいるyoutuberさん達の動画は,尺の何倍もの時間をかけて,多くの人の大変な努力と技術で編集をされているのでしょう。これまで漫然と観ているだけでしたが,制作する側に立ってみるとたくさんの気づきがあります。

 

多くのyoutuber動画では空白の時間を削り取り,細かくテンポよく動画をつなぎ,要所・要所に効果音やテロップを入れて,一瞬たりとも視聴者に飽きさせる間を与えません。情報が途切れなく直流で入ってくる感じです。考える暇がない分観るのが楽です。一方,リアルな講義は交流です。しかも負荷(受講者)は色々なので全員に力率1でパワーを送ることはできません。そのとき,受講者は講師に合わせて自分の思考をチューニングする必要があります。直流のようにただ流し込まれるのではなく,自分で共振するポイントを試行錯誤で探り当て,得られる情報を最大化する必要があるのです。これはとても認知的負荷のかかることですが,知の感度を上げるには重要なトレーニングです。目の前に出されて知ることより,まだ見えていないことを自分で探り当てる力の方が,大学の外では求められることもあります。

 

これが「知る」と「学ぶ」の違いだと思います。講義に期待するところが「知る」にとどまっている限りはYoutuber的動画が効果的ですが,そこに「学び」の要素を加えるにはどうすればいいのか? ということを考えながら,あと10回×3コマ分ビデオを作ります。